院試まとめ

東大教育学研究科(教育内容開発コース)院試まとめ

【合格体験記】東京大学大学院教育学研究科教育内容開発コース【院試】

院試が終わりました。僕自身過去に合格なさった方のブログを参考にさせていただいたので、誰かの役に立つこともあろうと思い合格体験記を執筆します。今回は東京大学大学院教育学研究科学校教育高度化専攻教育内容開発コースです。

 

経済系は院試ブログがものすごく多いのですが、教育学研究科はほとんど見かけませんね。院試は大学入試ほど選考基準が明確でなく情報戦の様相を呈しているので、未来の教育学研究科受験生に少しでも情報を残せればなぁと。

 

【基本情報】

・スペック

東大教育学部某コース所属(志望先とは全く関係のないコースです)

toeic 535(大学3年4月)

toefl ibt 64(大学4年5月)

 

内部は有利との噂もありますが、実績を見るとそうでもないようです。東大新聞によれば高度化専攻全体の倍率が3倍で内部の倍率が2倍なので、公平な採点基準のもと基礎学力の高い内部が少し多めに受かっているという印象ですね。総合教育科学科の持ち上がり組ははっきりと面接で優遇されているかもしれませんが、そちらも基礎学力の差に過ぎないかも。

 

・入試情報

英語

和訳です。1時間45分で、3問から2問選択して回答します。おそらく学部の専修と対応していて、①基礎教育学②教育社会科学③心身発達科学からそれぞれ出題されているのでしょう。専門知識があると当然読みやすく(教育心理学でいう「スキーマ」というやつですね)有利にはなりますが、単語が特別難解ということはありません。例年教育社会科学は簡単であることが多いように思います。

 

専門

①専攻共通問題②コース共通問題③選択問題の3題構成です。過去問を見ればわかると思いますが、選択問題以外どんな対策をすればいいのかよくわからない。(正直運ゲーだと思ったので、キャリアプラン的に可能な他の選択肢として他研究科を併願することを決意しました)

特に今年は①専攻共通問題が「教育における『公正(justice)』の実現」という風変わりなテーマでした。自分の専門領域と絡ませるために「公正」を再定義せざるを得ない訳ですが、他学部出身者は書きづらいだろうなーと思います。(結局僕は「公正」を「公平」と「適正手続きの保証」と再定義し、大学入試改革と絡めて書きました)

②コース共通問題は日本語の読解力と専門教科に対する多面的な理解が問われるのでしょうね。③選択問題は傾向が読みやすい分それなりのクオリティを求められそうです。

 

口述試験

研究計画書を基に主に研究計画について聞かれます。①卒論の内容②志望理由③研究計画が定型質問のようです。合否には関係ないでしょうが、修士課程修了後の進路も聞かれます。

今年は口述試験対象者が14人、最終合格者が7人でしたので、実質的に面接で合否が決まるのだと思います。詳しくは後述。

 

【対策と当日の感想】

・英語

苦手意識があったので真っ先に着手しました。他研究科受験のために5月にTOEFLを受ける必要があったので、その準備を3月に開始。6~7月はほぼ他研究科受験とSセメ定期試験準備等に費やし、8月から単語帳をやりました。

今年は間違いなく例年より簡単で、大きな声では言えませんが、正直あれが訳せないようでは修論は書けないだろうなというレベルでした。

 

使った単語帳は鉄緑会という東大受験専門の塾が出している『鉄壁』です。僕はこれを完璧に仕上げるには至りませんでしたが、これを仕上げるのを一つの目安とすると良さそうです。『鉄壁』に載ってない単語は他の受験者の多くも訳せないと割り切ってしまっていいのではないでしょうか。

 

・専門科目

誤解を恐れずに言えば(匿名ブログで誤解を恐れる必要は全くないのですが)、僕は「自分は専門科目で落とされることはないだろう」と確信していましたのであまり対策していません。

志望研究室の先生の著作を読んだのが3月~4月、7月に狙われそうだと思った「新学習指導要領」と新科目「歴史総合」「公共」を題材にした論文を読み、他研究科の筆記が全て終わった9月6日からもう何冊か文献を読みました。

当日は時間配分に失敗し、解答用紙7枚のうち1枚を白紙で提出しました。選択問題で「歴史総合」に関する問題が出てヤマは当たったのですが、数学・科学教育の問題が高得点を狙えそうだったのに時間が足りず「歴史総合」の方を選択せざるを得なかったのは痛恨でしたね。上述のように今年は専攻共通問題が曲者で、コース共通問題も個人的に書きづらかったのでそちらに時間を取られました。

 

読んだ本のタイトルだけ並べます(順不同)(院試対策でないものも含みます)

『戦後日本教育方法論史 上・下』※有用でした

『分数ができない大学生』※読み物としても面白い!

『協同的探究学習で育む「わかる学力」』※某先生の研究室に行くなら必読

『数学的・科学的リテラシーの心理学』※同上

『世界史なんていらない?』

『個性を煽られる子どもたち』

『学校から言論の自由がなくなる』

「新学習指導要領」

「歴史総合」「公共」に関する論文(日本学術会議のもの)

『理解とは何か』※絶版だそうです

雑誌『社会科教育』

『教育政治学を拓く』※学部長の著作!

etc...

↑ほとんど対策していないと言っておきながらたくさん読んでいるようにも見えますが、教育学部生なら半年でこのぐらいは自然にいくはず・・・(他学部の人は頑張ってください)

 

・面接

研究計画書が杜撰だったこともあり、練り直した研究計画について話しました。多少計画書と論点がずれるのは問題ないようです。

実際、1200字の制約で満足な研究計画を書けるはずもないので、計画書は面接で補うことを前提にまとめるといいかもしれません。特に、口頭で先行研究を引用するのは難しいので、先行研究に多くの字数を割くといいかも。あとは研究対象と研究目的を明記して、字数を取りがちな研究方法は口頭で話せるように準備しておくのがいいでしょう。

当日は、研究計画等の定型質問に対してはうまく答えられました。順番が後の方の人は和やかな空気になる傾向があるようです。教授もずっとこわもてだと疲れるのでしょうね。途中「何故専門課程と比べて教養課程の成績がこんなに悪いのですか?」と聞かれた時は「ヒエッ」という感じでしたが、合否に関係のない質問は気楽に応えて大丈夫そうです。最後にぽろっと「(併願院と両方受かった場合は)どちらに進学するかは決めかねています」と言ってしまったのですが、やはり合否に関係のない質問はなんと答えようが合否に関係ないのでしょうね(笑)

 

【選考基準(推測です)】

院試はブラックボックスです。内部と外部で扱いの差があってもおかしくありません。聞くところによると、工学研究科の面接は内部は自動的に満点になるようです。教育学研究科も、総合教育科学専攻の直属のコースを受ける人達は「受かって当然」のような空気です。

一方で、僕の志望先の研究室の先生は院生に「受験生との接触禁止令」を発するなど、選好の公平性に配慮しているようでした。また、教育学研究科全体で内部が半分落ちているというデータもあります。外部の人はそう悲観することはないでしょうし、内部の人も油断できませんね。

 

さて、そんな状況で教授は受験生のどんな能力を評価しているのだろうかと、院試の準備をしながら考えていたことをまとめます。

まず前提として、今年の教育内容開発コースは

出願者21人

受験者20人

筆記試験突破者14人

最終合格者7人

でした。筆記落ちには英語で足切られるような所謂「記念受験層」も含まれることを考えると、実質的に面接で合否が決まると見て良さそうです。特に教育学研究科は出願が6月と早いので、研究計画書は早めに始動するのが吉でしょうね。

 

・英語

絶対評価による足切りと見ていいでしょう。教育学部の教授ではなく駒場の教養英語部会が採点しているという噂や、直属組が教授に「英語ができないと救済のしようがないからそこだけは頑張ってね」と釘を刺されたという逸話もあります。実際、これができないと直属だろうがなんだろうが容赦なく足切られるのでしょう。専門科目は採点すらしてもらえないそうです。

逆に、英語がいくらできてもそれが評価されて合格することはないとも思います。修士論文を書けるだけの語学力があればそれで必要十分なわけですから、「英語だけの人」を取る理由はありませんね。留学生・社会人向けの「英語Ⅱ」という科目があることを考えても、英語に足切り以上の意味を持たせるのは難しそうです。

 

・専門

①専攻共通問題は「論点を設定する力」を見てるのでしょう。抽象的な問いに対して具体的な答えを要求するというのは、東大の学部入試でもよく使われる形式です。と言っても、専門領域と直接関係のないこの問題が合否を左右するとは考えにくいのですが・・・

②コース共通問題は、単純に「文献を読む力」ですかね。単純に全然読めていない人や、適当に本文をまとめたあと全く関係のない教科教育の話を展開する人はそれなりにいそうな気がします。これもある種の足切りとして機能しそうです。

③選択問題はシンプルに「専門領域の知識」ですね。現役の教員の方や教員養成大学出身者はここが得点源になるのでしょうか。某先生の出題だけ特殊で、ダイレクトに研究者としての素質を問うてる感じがありますね。別の某先生の研究室で開発教育やりたい人はここで苦労するのかも…?

 

・面接

「熱意を示すことが大事」なんて言う人もいますが、いくらなんでもそれはないだろうと思うのは僕だけでしょうか。強いて言うなら、研究計画の緻密さに熱意が表れているといいですね。間違っても「笑顔でハキハキと答えられた」とか「東大で学びたいという気持ちを伝えられた」とか、そういった類のことが加点要素になるとは思えません。

個人的には、「研究対象」「研究目的」及び「論点」を明確に伝えることを意識しました。論点というのは「・・・というデータから、~という結論(研究目的)が得られる」と言う場合の「・・・」の部分です。どういう研究デザインのもとどんなデータが得られれば、論理の飛躍無く目的としている結論が導けるかという点ですね。この辺は志望研究室によって変わってくるのでしょう。

また、「合否に関係のない質問」をされることがありますが、おそらくですがそれは本当に文字通り「合否に関係ない」のだと思います。彼らはひとえに「研究者としての素質」にしか関心がないのでしょう。

 

【最後に】

僕のスペックを見て「なんだ、東大の院なんて余裕じゃん」と思った人は要注意かもしれません。他研究科の情報も併せて総合的に考えると、院試における英語の比重はかなり低いと見るべきです。「英語だけの人」は警戒されます。大学院は研究をする場で、留学生とお喋りする場ではないのですから。

また、学歴ロンダリングなんて内部の人はほとんど気にしていませんし、教授もそうだと思います(彼らの関心は「研究者としての素質」だけですから)。もっとも、研究したいことがあって東大の院に来ることは学歴ロンダリングとは言わないようですし、教育学研究科なんてマニアックなところに来る人には端から関係ない話かもしれませんが。

これを見てる内部の方がもしいましたら、焦らずに頑張って欲しいと思います。文系の院試は出来レースではありませんが、内部のポテンシャルを持って真面目に勉強していれば、倍率10倍の臨床心理や定員に関わらず少数しか取らない生涯学習基盤経営を含め、どのコースでも行きたいところに行けるはずです。

 

他研究科については、気が向いたら書こうと思います。